経験者が思わず口にしてしまいがちな言葉を紹介したい。
1 こうしたらいいんじゃないかな
話を十分に聞くことなく、結論を見つけ、答えをここぞとばかりに見つける、一見良さげなこの言葉、しかし聞き手は「そんなありふれた解答なんて求めていないんだ」とますます心を閉ざしてしまう。解決策がたとえ見つかったとしても、ひとまずは黙って聞いておこう。
2 私にも同じ事があったわ。私の場合は・・・
自分の場合と相手の場合とでは、場面も違えば状況も違う。それを踏まえもせずに、シチュエーションだけ同じ点のみを見出し、話し手と同調する作戦に出ようったって、そうは行くか、と身構えてしまうわけなのです。こういう場合の意見は、たいてい参考になりません。
3 あ、それってこういうことでしょ
これは聞き手が「ウザイからまとめてよ」と訴えているメッセージと取れます。せっかく話し手がここまでまとまらない話を吐き出しているのですから、答えが分かっても、それを相手に正解提示しないほうがいいでしょう。話し手だって答えありきで話している場合もあるわけですし。ひとまず、全部吐き出させることのほうが先決です。
4 あなたがどう感じているか分かります。
私も同じ体験がありますから。
話し手が「こちらの話をして欲しい」と思っているのに、逆に聞き手が話し手になってしまいました。これも経験則を持っている人が陥りがちなミスです。あなたの経験がどうあれ、困っているのは話し手であり相談者です。どう考えているのかを、一緒になって考えるのが相談の糸口ですから、それを塞ぐようなこの物の言い方はやめた方がいいと思います。
5 あなたは~したいだけでしょう
これは「相手の心を動かすメンタルトレーニング」といった本に書かれている「相手の心を一方的に思わせ込むマインドコントロール」の一種です。このような表面的な心理作戦では、相談者の問題は一向に解決するはずがありません。
6 考えすぎ考え過ぎ!
もっとポジティブに考えて!
だからさ、今そんな気分だったら相談なんか来ないって。元気な人が元気な心のままで悩みにぶつかるからこういう錯誤が生じるのであって、例えるならば、マラソンのアスリートに「2km早く走りたいけれどどうすればいいですか」と聞いて「とにかく走りこむべし」と返事が来るのと一緒。本当に早く走りたいならば、もっと根本のことを考えてくれる人や、身近な人に相談するべし。
7 それは前に聞いたよ。
話し手はプロの話し手じゃないから、そりゃ何度も同じ事を繰り返すもの。聞き手としてはイライラしてめんどくさくなる瞬間でしょうが、それを表現してはいけません。この「繰り返す言葉」こそ、逆にチャンスと捉えて、結びつけていくと、意外と解放に結びつくものです。
8 それは、どうみてもあなたがおかしいよ。
物事に絶対ということはなく、部分的におかしいこと、理不尽なことが出てきても当然なのである。それを相対的に評価して「おかしい」と感じても、その場で評価はしないこと。話している、相談している本人は自分を否定されることを本当に嫌うものであり、同調を求めているはずなのです。「おかしい」と感じたら、おかしい考え方を逆に考えてポジティブにしてみませんか。それを相手に伝えることで、ネガティブに考えていたモヤモヤの霧も貼れるはずです。
9 それはわがままだよ。もっと大人になりなよ。
「君には常識がないね」と言っている言葉ですね。この言葉を言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまいます。聞き手としては最悪のアドバイスです。大人になる、とは何でしょう。せっかく心が苦しくて悩んで心の中を話しているのに、世間一般の常識がないととられることの悲しさ。経験則を持っているいないにかぎらず聞き手はこんなこと言ってはいけません。
10 普通の人はそんなふうには考えないよ。
ちょっとおかしいんじゃないの。
悪うござんした。おかしいとは、これまたバカにされた表現。こういう口調が出るのも、かわいそうなことに、聞き手がこういう指導を身を持って受けたから、「目には目を」的な感じで出てしまうのでしょう。こういう言葉が平然と出るから、あまり苦しい思いをして勝ち上がった方の経験則は充てにならないのです。
11 世捨て人にでもなればいいんじゃない。
「皮肉」言っている本人は「ユーモア」と思っているからいっそうたちが悪い。得てしてこういうジョークは、せっかくの相談者の気持ちを踏みにじる場合が多い。それは聞き手が「お前の話は退屈でしょうがなかったから」という気持ちを返したいから。
12 (こんなに泣くなんて…この人はおかしいんじゃないか…ちょっと怖いよ……。)
相談者の中には感極まって泣き崩れる方も多いことでしょう。そんな時にも物怖じせずに、肩に手をやって「大丈夫ですから」と同調の姿勢を崩さずに聞いてあげること。
経験則で物語る人の場合、どうも身体で語る人が多いので、相談者として不向きなのは、こういう「自分は苦しい中でもどうにかやってこられた自信」のようなものがあるから、人間的にはすばらしいのでしょうが、苦しい気持ちを救ってあげられるかと言われれば、おそらく「そんなの気にすんな。前向いて歩け」とかしか言えないと思うのです。
結論を言えば、悩み事は「聞き手のプロ」に話すのが一番いいのである。